第8章

山崎絵麻の視点

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。目が覚めると、私は拓也の胸に頭を乗せていた。彼の腕が腰に回され、シーツはかろうじて私たちを隠しているだけ。

彼の心臓の鼓動が伝わってくる。規則正しく、確かなもの。

顔を上げると、彼はもう起きていた。三年前、私が結婚したと思っていた男性とは違う、とても優しい目つきで私を見つめている。

「おはよう、絵麻」彼の声は寝起きで掠れていた。

「おはよう」

その時、ふと気づいた。意識を集中させて、彼の思考を読み取ろうとする。

……何もない。

完全な沈黙。

耳元で聞こえるのは彼の心臓の音と、私たち二人の呼吸音だけ。あれだけ騒...

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