第9章

 裁判から二週間後、結衣は刑務所の医務室に横たわっていた。死刑執行は翌日に控えていた。

 彼女は食事を拒み、ただ天井を見つめている。

「沙織」

 虚空に向かって彼女は囁いた。

「私を見ているんでしょう」

「どこにでもいるわね。影の中、鏡の中、悪夢の中にまで」

 私は何も感じなかった。満足感も、哀れみも。彼女は自業自得の報いを受けているだけだ。

「ごめんなさい」

 彼女は懇願するように言った。

「本当に死なせるつもりなんてなかったの」

 だが、私の葬儀での彼女の冷たい笑い声を覚えている。すべて計画通りだという告白も。今さら涙を流しても何の意味もない。

 看守が最後の食事を...

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