第111章

 彼女は勢いよく書斎へ飛び込んでくるなり、林原知世のほうなど一瞥もしないまま、興奮した声でお爺さんに食ってかかった。

『お父さん! ボケたんですか?! 林原知世はもう、陸原家の嫁じゃありませんよ!』

 そのまま机上の書類を指さす。まるで、家の宝を盗人に奪われるのを見たみたいに。

『赤の他人に、どうして会社の株とプロジェクトを渡すんです? 筋が通りません!』

 さらに畳みかける。

『前は凛くんの奥さんだったから、任せるのも分かります。でも今は離婚して、うちとは無関係です! 全部、取り戻さなきゃ!』

『こんなのが外に漏れたら、陸原家の顔はどうなるんです? 陸原家のものは誰でも持ってい...

ログインして続きを読む