第116章

宮崎直志の顔色が、嵐の前の空みたいに一瞬で沈んだ。大きく息を吸い込み、せっかくの流れを断ち切られた怒りを、歯を食いしばって押し殺す。

 掠れが残る声に、露骨な不機嫌が混じった。

『入れ!』

 アシスタントがドアを開け、書類ファイルを抱えたまま入ってくる。足を踏み入れた瞬間、室内の空気が異様だと悟った。

 今にも人を殺しそうな社長の冷たい視線。

 それから、林原部長の耳の付け根が真っ赤で、背中の線が不自然に強張っていること――。

 頭皮がぞわりと粟立ち、背中に冷や汗が滲む。いっそ透明人間になって、この場から消えたい。

 な、な、なにを見てしまったんだ。

 なにを邪魔してしまった...

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