第118章

『送っていこうか』

 林原知世は反射的に断りかけた。タクシーで帰れます、と。

 けれど言葉が喉元まで上がったところで、彼の目に捕まる。まるで心の奥まで見透かすような視線。

 昼間、あの堅くて温かい腕に抱き寄せられたこと。迷いなく庇い、言い切ってくれたこと。

 それらがふっと蘇って、口にしかけた拒否は音もなく引っ込んだ。

 小さく頷き、荷物をまとめる。アシスタントが入ってきた瞬間には、口元だけで薄く笑ってみせた。

『宮崎様、ありがとうございます』

 車内にはゆるやかなBGM。ふたりとも、しばらく言葉を探さないまま、狭い空間に微妙で静かな気配だけが流れていく。

『夜、何食べたい?...

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