第40章

白石キキはドア口に立ち、ひと言ひと言をやけに丁寧に、やけに優しく並べた。

……わざとだ。保温ポットを抱えて、ここへ来た。

このところ林原知世が社内で持ち上げられすぎている。陸原家の長孫を腹に宿しているのは自分のほうなのに。だから一度、きっちり面目を潰してやらないといけない――そんな算段。

ところが会議室は、紙をめくる音だけが淡々と響いていた。

市場部の主管が資料を示しながら報告する。

「南の土地ですが、新しい計画案が出ました。ただ、予算の追加が必要でして……」

林原知世は小さくうなずいた。

「法務に追加の覚書を作らせて。今日の午後、私に上げて」

全員の視線は、資料に縫い止めら...

ログインして続きを読む