第41章

彼女がふっと顔を上げると、白石キキの口元に浮かぶ笑みを、視線が一瞬で捉えた。

――わざとだ。

白石キキは聞こえなかったかのように、そのまま前へ進む。足取りまで、さっきより軽い。

「……待ちなさい」

林原知世が口を開いた声は、先ほどより低く沈んでいた。有無を言わせない圧が滲む。

白石キキの足が止まり、ゆっくりと振り返る。顔には、もう一度いかにも可哀想な表情が貼り付けられていた。

「知世、まだ何か? 私、あんまり遅いと凛くんが心配しちゃう」

林原知世は視線を落とし、腰をかがめて床の陶片を拾い上げた。

花瓶は見るも無残に砕け散っている。目の前の惨状に、知世は深く息を吸った。

そし...

ログインして続きを読む