第51章

陸原凛の声が、まだ微かに耳に残っている。

林原知世はその瞬間、頭の芯まで冴えた。上着を引っ掴むように羽織り、足早に廊下へ出る。

階段の踊り場まで来たところで、下から刺々しい声が突き上げてきた。

「おい、俺が話してんだろ。黙りか?」

知世は足を止め、下を覗く。

ロビーの入口付近で、陸原凛が宮崎直志の前に半身で立ちはだかり、腕を組んだまま顎を上げている。いかにも威圧的な態度だった。

対する宮崎直志は、すぐ目の前。

黒いシャツをさらりと着こなし、ドア枠にもたれている。肩の力は抜けているのに、近づくなと告げるような冷えた気配だけが、その場を支配していた。

「人の顔してりゃ、ここでうろ...

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