第53章

さっき自分が浴びせた嘲笑を思い出し、白石キキの心臓は胸の内でばくばくと暴れた。

宮崎家の若様……。

上流の、ごく限られた界隈で噂だけが先に走る名前。その人物が、彼女が何度も何度も見下してきた「ただのボディガード」だったなんて。

宮崎直志の周囲に漂う、目に見えない圧。そこに過去の自分の言葉が重なり、膝が勝手に震えだす。

だが、キキはすぐに立て直した。

この機会に取り入れさえすれば、陸原家でこれ以上肩身の狭い思いをしなくて済む。

陸原凛どころか、東京の男という男、宮崎家の若様に敵う者がいるはずがない。

キキは息を整え、表情を作り替える。瞳を潤ませ、頬を淡く染め、足早に宮崎直志の前へ...

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