第57章

ほとんど反射みたいに、林原知世は膝をわずかに落とし――半秒も経たないうちに、ぴたりと体勢を立て直した。

視線を落とす。小原寧音の足が、まだ引っ込めきれていない。つま先が、こちらの足首めがけて真っすぐ向いていた。

――わざと、つまずかせるつもりだったのだ。

相手が足を引くより早く、林原知世は自分の足を上げる。次の瞬間、ヒールが狙い澄ましたように小原寧音の足の甲をぐり、と踏み潰した。

力は容赦なく乗せた。踏まれた側の体が、びくりと強張ったのがわかる。

「きゃあ――っ!」

甲から突き抜けるような痛みと一緒に、小原寧音の悲鳴が跳ね上がった。よろけて半歩下がると、目尻が一瞬で真っ赤に染まり...

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