第64章

ようやくオフィスに静けさが戻った。

林原知世は床に散った札束を一瞥し、入口にいる秘書へ顎をしゃくる。

「清掃を呼んで片づけて。それと建具屋にも連絡して、ドアを直してもらって。このお金は帳簿につけて、余った分は小原家へ返しておいて」

秘書が「かしこまりました」と応じて前に出ると、林原知世は執務椅子に腰を下ろし、そのまま何事もなかったように書類仕事へ戻った。

午後、終業間際。

立ち上がろうとした瞬間、スマホがぶるっと震えた。

画面に表示されたのは『宮崎直志』の名。林原知世は一拍置いてから、通話を取る。

「下りてこい」

受話口の向こうから、男の低く掠れた声が落ちてきた。

林原知世...

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