第70章

そう言い終えると、彼は乱暴に彼女の手首を放り投げた。林原知世を一度も振り返らないまま、まだ熱の残る頬を押さえ、踵を返して大股で玄関へ向かう。

部屋に、ようやく静けさが戻った。

林原知世は握り潰されるように痛む手首を押さえ、荒く上下する胸をしばらく落ち着かせてから、ふらりと立ち上がる。ドアまで行って鍵をかけ、板に背を預けたまま、そっと目を閉じた。

開いた瞳に残っていたのは、底なしの疲労だけだった。

翌朝。窓の外は相変わらずの豪雨。

重たい体を引きずるように起き上がり、洗面台の鏡を覗いた瞬間、目の下にうっすらとした青黒さが浮いているのに気づく。

昨夜、陸原凛にあんな騒ぎを起こされて、...

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