第76章

彼女は目の前にいる、名ばかりの両親を見上げた。瞳の奥に残っていた最後の温度が、ぷつりと消える。

『ありえない』

きっぱりと言い切る。声は、死んだ水面みたいに静かだった。『この株はお婆さんが私に遺してくれたものよ。あの人の気持ちまで、誰にも触らせない!』

『どうしてそんな言い方ができるの!』

林原お母さんはたちまち目尻を赤くして、腕を掴もうと身を乗り出す。けれど林原知世が身を引くと、口調はいっそう被害者めいていった。『奈々子は林原家でずっと暮らしてきたのに、林原グループでは立場がないのよ。あなたは陸原家を後ろ盾にして、衣食住に困らないでしょう? 少し譲ってあげたっていいじゃない』

横...

ログインして続きを読む