第80章

数日後、陸原のオフィス。

林原知世はモニターに映る企画書へ視線を落とし、眉をわずかに寄せた。契約条項の細部を、噛み砕くように追っている。

陸原が今回勝負に出る新規案件。観光産業が右肩上がりのいま、郊外に文旅一体型の複合施設を建設する計画だ。

だが相手方の温度感が読めない。まずはこの資料を、骨の髄まで理解しておく必要があった。

『コンコンコン——』

ノックのあと、アシスタントが扉を開けて入ってくる。表情は硬く、手には刷りたての書類。

「林原様。入札管理のほうから連絡が入りました。陸原凛が統括している子会社も、この案件の入札資料を提出したそうです」

林原知世はペンを握った手を止め、...

ログインして続きを読む