第83章

白石キキは力なく首を振った。

『大丈夫だよ、凛くん……ちょっと急いで走っちゃって、力が抜けただけ』

そう言いながら小腹にそっと手を添える。瞳の奥に、ふわりと柔らかな光が宿った。

『赤ちゃんもお利口で、全然ぐずってないから……慌てないで』

言い終える前に、こほん、と小さく二度咳き込む。顔色がさらに白くなり、本当に体力を使い切ったみたいだった。

『慌てるに決まってるだろ!』

陸原凛は慌てて手を離し、今度は腕でそっと支えながら椅子へ導く。

『ほら、座れ! 妊娠してるのに、無理すんな!』

ベッドの上の陸原母は、さっきまでは「助けてくれた娘さん」への感謝だけだった。だが二人のやりとりを...

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