第85章

白石キキの名を口にしたあと、祖父の視線はそのまま隣に立つ陸原の母へ移った。

陸原の母は見据えられただけで全身がこわばる。何か言い訳を――そう思った瞬間、祖父が容赦なく遮る。

『お前が何を考えてるか、わしが知らんとでも思ったか。病気を盾にして知世を思い通りにしようって腹だろう。いいか、わしが息をしている限り、そんな真似は絶対にさせん』

『これからはあの子を大事にしろ。くだらん小細工はやめろ。もう一度でも指一本触れてみろ――必ず、代償を払わせる』

祖父の眼光が、刃物みたいに鋭くなる。

言い切ると、彼は陸原の母の「怯え」と「憎しみ」が入り混じった顔を一瞥もしないまま、杖を突き、病室を出て...

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