第98章

白石キキの甲高い声が個室に反響した。あからさまな侮辱と、相手を見下す傲慢さを隠しもしない。

彼女は自分の靴の甲についた、取るに足りない酒の染みを指さした。まるで許しがたい罪の証拠でも見つけたかのように、林原知世に跪いて舐めて拭けと命じる。

林原知世は、しゃがみかけたところで動きを止めた。

ゆっくりと身を起こし、伏せたまつげ越しに白石キキを冷ややかに見据える。

マスクが表情の大半を隠している。それでも露わになった瞳には、さっきまでの取り繕った怯えはもうない。残っているのは、凍てつくような冷気だけだった。

「お客様」

声は波ひとつ立たず、それでいてはっきり届く。

「染みは拭き取りま...

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