第112章 石橋結翔をあしらう

「なるほどな。じゃあ、あいつの婚約者は?」

石橋結翔が、いかにもどうでもよさそうに訊いた。

真理の胸が、ひゅっと跳ねる。

睡眠用のアロマオイルなら、まだ誤魔化しが利いた。けれど――婚約者は無理だ。

真理は松下哲哉の婚約者なんて会ったこともない。どんな女か知っているはずがない。

「結翔、ほんと鈍いんだから」

真理は石橋結翔の上に跨り、両腕を彼の肩に絡めた。

にこり、と花が咲くみたいに笑って、潤んだ瞳で見上げる。――色仕掛けで押し切るつもりだ。

「睡眠薬なんて渡してくる人が、まともなわけないでしょ?」

胸元を軽く叩き、甘ったるい声で続ける。

「私だって推測よ。あなたの友だちだ...

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