第112章 決まり文句

真理は嫌悪に眉をきつく寄せ、菅野彩乃を見る目に露骨な蔑みを滲ませた。

ポケットに手を差し入れ、指先でスイッチを押し込む。

「つまり、石橋航平を私のそばに置いたのは……あなたの仕込みってことね」

その口調は断定で、問いではない。

前の人生で、石橋航平が現れるタイミングが妙に出来すぎていた理由が、ようやく腑に落ちた。裏で菅野彩乃が糸を引いていたのだ。

最初から、彼は目的を持って真理に近づいていた。甘い言葉も、優しさも、全部――真理をさらに深い奈落へ突き落とし、菅野彩乃の盾にするための演技。

とっくに二人の本性は見抜いていた。けれど真相を改めて突きつけられれば、胸の奥がちくりと痛むのは...

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