第117章 墓参り

「全部、私の務めですから」

朝の空気には薄い霜がまとわりつき、淡い靄が差し込む陽をわずかに遮っていた。冷えが骨の奥まで染みる。

真理は後部座席で、白菊の花束を指先でぎゅっと握りしめている。顔色は朝の光よりも白い。

隣の石橋結翔は、彼女の張りつめた気配に気づくと、何も言わずに手のひらを重ねた。薄い布越しに伝わる体温が、ひんやりした肌をそっと慰める。

「俺がいる」

低く落ち着いた声が、ゆっくりと車内に落ちた。強心剤みたいに、その一言だけで真理の呼吸が少し整う。

車が停まると同時に、菅野文彦の車のそばに、身なりを隙なく整えた女が立っているのが見えた。

菅野琴子だ。

地味な色合いのス...

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