第130章 口のきけない夫婦

広瀬結月は恐る恐る身を引いた。けれど背中にあるのは、ひやりと冷たい壁だけ。逃げ場なんて、どこにもない。

仕方なく顔を上げると、菅野彩乃の憎たらしい顔が視界いっぱいに迫っていた。

「んん……っ」

口には白い布を押し込まれ、声にならない。もがけばもがくほど縄が食い込み、肌に赤い痕が浮かぶ。

菅野彩乃は一歩、また一歩と近づいてくる。その醜い表情が、広瀬結月の瞳の奥にくっきり焼きついていった。

……

「ほかに防犯カメラは?」

真理は横目で、床に転がる石橋航平を見下ろした。泥みたいに伸びきっている。

「……言うわけねぇだろ」

石橋航平は息も絶え絶えに吐き捨てる。

「……ふん」

「...

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