第136章 月光の涙

ざわり、と会場が揺れた。

突然の暗転に、誰もが息を呑み、押し合う人波のあちこちから不安げな囁きが立つ。

だが停電は長く続かなかった。ほんの数呼吸――。

ぱっと、白いスポットライトが一点を射抜く。

そこに立っていたのは、石橋結翔だった。

真理は思わず眉を上げる。

……何、これ。演出?

会場で唯一の光は、石橋結翔の背を追うように移動していく。

正確には、彼の後ろでスタッフに押されているワゴンを照らしていた。

ワゴンの上には、背の高い何かが載せられている。暗い布で隅々まで覆われ、その姿は見えない。

隠されれば隠されるほど、覗きたくなるのが人の性だ。

先頭を行く石橋結翔は灰色の...

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