第35章 君にはチャンスを与えた

彼女の指先がドアノブに触れた。ひやりとした冷たさに、わずかに肩が震える。

石橋結翔は、彼女の毅然とした背中を凝視していた。

脳裏には、彼女が他人の腕に抱かれる光景が奔流のように押し寄せてくる。

他の男に微笑みかけ、彼が口づけた肌に他人が触れ、あまつさえ他人の下で甘い声を上げる……。

そんな光景を想像するだけで、理性が崩壊しそうだった。

断じて許さない。

「手放す」だの「幸せを願う」だの……そんな綺麗事、クソ食らえだ。

石橋結翔は、善人じゃない。

彼女が鍵をひねろうとした、その瞬間――背後から凄まじい力が襲いかかる。

手首を、灼けるように熱い大きな手ががっちり掴んだ。

「真...

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