第38章 指輪

彼女は反射的に半歩退き、指先をきゅっと丸めた。

許しもなく、他人のプライバシーを覗き見てしまった。

胸の内がざわつき、見なかったことにしてそっと退くべきか、それとも正直に打ち明けるべきか――迷っていた、そのとき。

背後から、落ち着いた足音が近づいてきた。

菅野真理の身体がこわばり、勢いよく振り返る。

石橋結翔が、いつの間にか書斎の入口に立っていた。深いグレーの部屋着姿。いつもの鋭さは影を潜め、サングラスもない。静かにこちらを見つめる深い瞳が、真理と――その背後で口を開けたままの隠し部屋の入口を映していた。

怒っているのか、いないのか。表情からは読み取れない。平静すぎて、逆に心臓が...

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