第53章 あなたは私の

真理はカングランへ戻った。

「奥様、お帰りなさいませ」

高木が近づき、鞄を受け取る。表情には、どこか落ち着かない色が滲んでいた。

真理はその違和感を逃さない。

「結翔は?」

「書斎にいらっしゃいます。お薬が……まだ」

高木は声を落とした。

「昼も夕方もお声がけしましたが、結翔様は『置いとけ』と。それからは、もう中へ入れなくて……」

胸の奥がきゅっと縮む。

真理は答える間もなく、二階へ駆け上がった。

書斎の扉は半開き。中は灯りがついていない。

そっと押し開けると、窓際の肘掛け椅子に石橋結翔が座っていた。夕闇に溶ける背中が、ひどく寂しく見える。

机の上の水と薬は、手つかず...

ログインして続きを読む