第96章 扉を蹴り破る

真理が顔を上げた。瞳には氷を焼き入れたような冷たさが宿っている。怒りで胸の奥は煮えたぎっているはずなのに、視線だけは恐ろしいほど澄んでいた。理性という名の枷が、感情のすべてをきつく締め上げている。

菅野彩乃。

その名を心の中で何度も踏み潰すたび、怒りの火はさらに勢いを増した。

――けれど、真理は押し殺す。

今はまず、広瀬結月を助け出すのが先だ。

「先生に連絡します。使えそうなもの、持ってきてもらう」

金田倫也の声にも焦りが滲む。

真理は小さく頷き、深く息を吸うと、もう一度ドアへ向けて脚を振り上げた。

「ドンッ――ガンッ!」

トイレの扉に貼られた表示が耐えきれず、べしゃりと床...

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