第104章

お爺さんはふいに顔を向け、青美を見つめた。眼窩が、うっすら赤い。

しばらく沈黙が落ちてから、お爺さんがぽつりと口を開く。

『覚えてるかい。お前が早村家に嫁いできた頃のこと』

鈴木青美は小さくうなずいた。

『覚えてます』

『あの頃、お前はいくつだった……二十三か、二十四か』お爺さんは目を細め、記憶を手繰るように言った。

『細くて小さくてな。居間に立ってる姿が、移したばかりの苗木みたいだった。あのとき、婆さんに言ったんだ。この子はいい、目が澄んでる、いい子だって』

鈴木青美は何も言わず、ただ静かに耳を傾けた。

『それから早村で仕事を任せたら、よくやった。わしの想像以上に、だ。最初...

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