第115章

六年。

出会ってから今日まで、きっかり六年だ。

六年もあれば、他人なら子どもが何人もいてもおかしくない。

けれど彼女の六年は、誰かに貸したまま返ってこなかった品物みたいだった。ようやく手元に戻ってきたときには、もう古びて、皺だらけで、最初に差し出した頃の形をしていない。

それでも、あの家を出たこと、あの人を手放したことは――他人の口にかかれば「大儲けしたくせに、ありがたみも知らない女」になる。

鈴木青美は口元をわずかに持ち上げた。

たぶん、これが骨の髄まで染みついた偏見というやつだ。

林原稲美も、今の言葉を聞いていた。

顔色がさっと変わり、手にしていた書類を青美の胸元へ押しつ...

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