第117章

葉山惠也の胸が、ふいに小さく揺れた。

それが何なのか、うまく言葉にできない。凪いだ水面に小石を投げ込まれたみたいに、波紋が一つ、また一つと広がっていく。今まで触れられたことのない場所まで、静かに届いてしまうような――そんな感覚。

彼は視線を落とし、茶をひと口含んだ。もう冷めている。

ほろ苦くて、少し渋い。けれど、その味がなぜかちょうどいいと思えた。

食後、鈴木青美はナプキンを置き、バッグを手に取って、礼儀正しく微笑む。

『葉山先生、今日はありがとうございました。では、私はこれで。ギャラリーのほうで少し用があって』

葉山惠也はうなずき、同じように立ち上がった。だが、鈴木青美が背を向...

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