第118章

前方そう遠くない場所、海棠の木の下に二人が座っていた。

細くて、すっと背筋の伸びたその後ろ姿は――見間違えようがないほど、見覚えがある。

早村謙介の心臓が、どくんどくんと太鼓みたいに鳴り出した。ほとんど反射で、足が前へ出る。

百日以上――。

あの背中を、現実では一度も見ていない。夢の中でだけ、何度も何度も追いかけてきた。

だから、突然目の前に現れた途端、考えるより先に近づきたくなった。

けれど、すぐそばまで来たところで、早村謙介はふっと足を止める。

鈴木青美。間違いない。

そして彼女の隣にいる男は――葉山惠也だった。

二人は互いを見つめ合い、言葉はない。

それなのに空気だ...

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