第123章

奪うことじゃない。縛りつけることでもない。死んでも手放さない、なんて執着でもない。

たとえ自分が痛くてたまらなくても、彼女だけは無事でいてほしい――ただ、それだけ。

早村謙介は病室の入口で二秒ほど立ち止まり、深く息を吸った。胸の奥で荒れ狂う感情を押し沈めてから、静かに中へ入る。

『薬、取ってきた』

ビニール袋をベッド脇に置くと、鈴木青美は小さく頷いた。

『帰ろう』青美が言い、ベッドの縁に手をついて立ち上がろうとする。

早村謙介はすぐに腕を伸ばし、彼女の上腕を支えた。青美はその力を借りて立ち上がり、片足でぴょん、と二度ほど跳ねて体勢を整える。

そのぎこちなさを見た瞬間、早村謙介は...

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