第124章

車のスピードは大したことがなかった。だが、それでも――その女の身体に、確かに当たった。

早村謙介が聞けたのは「どんっ」という鈍い音だけだった。次の瞬間、背中を冷たい汗がつうっと伝う。

彼は慌てて車を降りた。

街灯の光の下、髪を振り乱した女が地面にへたり込んでいるのが見える。

早村謙介は駆け寄った。

『大丈夫ですか。どこか打ちましたか』

女が顔を上げる。涙でぐしゃぐしゃだった。

白原礼子――。

アントルが救急の処置室から出てきた時、早村謙介はまだ手術室の前に立ち尽くしたままだった。

『大腿骨の骨折です』アントルはマスクを外し、少しかすれた声で言った。『固定はできましたが、数か...

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