第20章

彼はこれまで、彼女の献身を当然のように受け取ってきた。そして、それこそが早村夫人である彼女の務めなのだと、ずっと思い込んでいた。

自分は彼女に肩書きも地位も与えた。自分と結婚しなければ、決して手に入らなかったものを与えたのだと。

けれど、その裏で積み重なっていた犠牲が、少しずつ彼女の健康を、命を削っていたことなど、一度も考えたことがなかった。

では、鈴木青美が病に苦しみ、心まで追い詰められていた時、自分は何をしていたのか。

青美に泥をかぶせた。

たった一枚の供述書で、彼女の口を封じた。

早村謙介はふいに手を上げると、自分の頬を思いきり張った。

「早村様!」

周防誠がぎょっとし...

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