第23章

好きになった相手が、必ずしも自分にふさわしいとは限らない。

そして、ふさわしい相手ほど――好きになれない。

きっと、人は欲張りなんだろう。

そんなことを考えていた矢先、美術館の入口がざわついた。

鈴木青美が振り向いた瞬間、表情がすっと冷える。

早村謙介が来たのだ。

しかも早村瑞子を連れて。瑞子は彼の腕に当然のように絡みつき、淡いピンクのワンピースに身を包んで、花みたいに甘い笑みを浮かべていた。

若いって、それだけで武器だ。

二人はまっすぐに中村赤人夫妻のもとへ向かう。

「こんなところでお会いできるとは」早村謙介が手を差し出す。

中村赤人が握り返した。

「早村様。これはこ...

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