第31章

早村瑞子の顔色がさっと変わった。

鈴木青美はさほど大きくない段ボール箱を抱え直し、顔を上げて早村瑞子に薄く微笑む。

「それに、私はもう会社の人間じゃありません。元同僚として皆さんにちょっと生活の経験を話しただけで、人心掌握だの買収だのって――そこまで大げさじゃないでしょう?」

そう言い終えると、まとめた箱を抱えたまま、くるりと踵を返して立ち去ろうとした。

早村瑞子が追いすがる。人の気配が消えた場所まで来た途端、噛みつくように吐き捨てた。

「たかが謙介に二年教わっただけで! 会社に何年かいただけで、あんたが偉いとでも思ってるの? いつか謙介お兄ちゃんは私にも教えてくれる。私のほうが、...

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