第68章

伊藤夕子は、その一言に叩きのめされたように一歩退いた。

『あんた……あんた正気じゃない! 早村謙介、いま自分が何を言ってるかわかってるの!?』

『わかってる』

早村謙介は背筋を伸ばし、ベッドの前に立って道を塞いだ。

『俺もわかってる。青美を何度も追い詰めたのが誰か、裏で煽って火を大きくしたのが誰かも。母さん――言わないからって、知らないと思うなよ』

一拍置き、声の温度だけが落ちる。

『母親だから、今日は言い切らない。だが、この協議書……』

足元の破り捨てられた紙片を、靴先で軽く蹴った。

『それと、今日のあなたのやり方。次はない。最後にしてくれ』

そして、青ざめて固まっている...

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