第71章

鈴木青美は呆然と首を巡らせ、伊藤靜美を見た。伊藤靜美は痛ましげに手を伸ばし、涙で濡れて頬に貼りついた髪をそっと払ってやる。絹のハンカチで、頬に残った涙の筋を少しずつ拭い取った。

『いい子。もう大丈夫よ。おばあさまはきっと良くなるから』

伊藤靜美は優しく背中を撫でる。

『帰りたくないなら、ここにいるわ。あなたのそばに。どこにも行かない』

青美の涙がまた溢れた。礼を言おうとして唇を開くのに、声が出ない。ただ、伊藤靜美の手をいっそう強く握りしめた。

彼女はICUの前で丸一日と一晩、張りついていた。飲まず食わず、眠りもせず。

早村謙介は少し離れた場所に立ち尽くしていた。青美が耐えた時間だ...

ログインして続きを読む