第72章

仮設の執務室を借り、鈴木青美の祖母の今後の治療方針について葉山惠也と中川秋友が細部まで詰めたあと、二人が廊下へ出ると――。

廊下の突き当たりに、早村謙介がまだいた。冷たい壁に背を預け、俯いたまま、微動だにしない。

葉山惠也は眉をひそめ、短く息を吐く。それでも歩み寄った。

『謙介、まだここにいるのか。奥さんなら、もう中村奥さんが連れて行ったぞ。そんな顔して……誰に見せるつもりだ』

早村謙介はゆっくり顔を上げ、かすれた声で首を振った。

『違う……俺は……祖母さんを殺すつもりなんてなかった。青美を傷つけるつもりも……俺はちゃんと……ちゃんと医者を呼んだんだ……』

そこで、早村謙介の表情...

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