第80章

『……な、何?』早村瑞子は呆然とした。

信じられないというように胸元を押さえ、焦点の合わない目でぶつぶつ呟く。

『そんな……私は心臓の発作を起こしただけよ……あの感じ……息ができなくて、胸が裂けるみたいに痛くて……どうして、薬を飲んだことになってるの……?』

心臓の病気がとっくに治っていることは事実だ。そしてそれを早村謙介に隠してきたのも、間違いない。

けれど前回の「発作」は、瑞子自身も本気で恐怖した。

最近は神経が張り詰めすぎていた。早村謙介と鈴木青美がいつ離婚するのか、そればかり気にして――そのせいで昔の症状がぶり返したのだと、ずっと思い込んでいた。

それなのに、自分がわざわ...

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