第91章

母親を失って二十二年――それは、母が彼女を失って二十二年でもあった。

家族を心配させるようなことは、鈴木青美はもう二度としない。

伊藤靜美はようやく少し息をつき、それから念を押すように言った。

『お婆さんに、ママからよろしくって伝えてね。私も仕事が片づき次第、すぐA市へ向かって、直接ご挨拶に伺うから』

鈴木青美は「うん」と頷き、もう一度だけ母を抱きしめてから、車へ乗り込んだ。

飛行機がA市に着陸する。

見慣れた出口。見慣れた景色。

それなのに――今回の帰郷は、胸の内がまるで違った。

これから先、A市での彼女は「独りの人間」だ。

自分自身としての、鈴木青美。

誰かの奥さんで...

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