第96章

車のドアにもたれ、腕を組んだまま俯いている。――完全に寝落ちしていた。

秋の朝の冷気は骨に刺さるほどだというのに、身につけているのは薄いシャツ一枚。そんな格好で、風の中を一晩やり過ごしたのだ。

伊藤静人は、玄関先で立ち尽くしたままの鈴木青美に気づくと、すぐに車を降り、彼女の視線の先を追った。そして、車の脇で小さく身を縮めた影を見つける。

一瞬、言葉を失い――次いで眉をひそめ、足早に近づいた。

『お嬢様』低い声で尋ねる。『追い払ってきましょうか』

鈴木青美はしばらく沈黙し、視線を引き戻した。

『早村家に電話して。迎えに来させて』

伊藤静人は小さく頷く。

『かしこまりました、お嬢...

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