第97章

村田さんは台所から出てくるなり、足早に玄関へ向かって扉を開けた。

外に立っていたのは若い男だった。物腰は柔らかそうだが、見覚えがない。

村田さんはしばらく記憶を探ったものの思い当たらず、丁寧に声をかける。

『鈴木さんにご用でしょうか。失礼ですが……』

「こんにちは」

男は軽く会釈した。

「葉山惠也と申します。鈴木青美お嬢様はいらっしゃいますか」

リビングにいた鈴木青美は、その名乗りを耳にした瞬間、身体がわずかにこわばった。

――どうして、彼が。

娘の異変に気づいた伊藤靜美が、すぐさま声を落とす。

『青美、会う?』

鈴木青美は少し黙ってから、ゆっくり立ち上がった。

『お...

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