第98章

リビングでは、伊藤靜美がお婆さんの相手をしていた。二人は肩を寄せ合って座り、頭をこつんと合わせて、何やら内緒話でもしているらしい。どちらの顔にも、ふわりと笑みが浮かんでいる。

足音に気づいたお婆さんが顔を上げ、葉山惠也を見た途端、きょとんと目を瞬かせた。すぐに思い出したように、驚いた声を上げる。

『あら……この前の、お医者さん?』

葉山惠也は足早に近づき、腰を折って穏やかに笑った。

『はじめまして。葉山惠也と申します。以前、病院でお会いしましたよね。退院されたと聞いたので、回復の様子を伺いに来ました』

お婆さんは慌てて手招きし、座るよう促す。

『まあまあ、わざわざ……ほんとにご丁...

ログインして続きを読む