第7章
翌朝。階下から聞こえてくる食器の触れ合う音——カチャカチャという微かな響きに、意識を引き戻された。
どれだけ固く瞼を閉じても、もう眠りの淵へ沈むことはできなかった。
観念して、階下へ降りる。そこには渋木明宏がいた。袖を捲り上げ、コンロの前に立っている。その手つきはどこかぎこちなく、必死に「日常」を演じようとしているのが痛いほど伝わってきた。
キッチンに漂うトマト煮込みの甘酸っぱい香り。それは、私たちの間に張り詰めた冷たい空気とは、あまりにも不釣り合いだった。
私の足音に気づき、彼は弾かれたように顔を上げる。その瞳には、腫れ物に触れるような怯えが滲んでいた。
「昼食、できて...
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