第2章

 ケイルは私の手首を放すと、出入り口に立つ群れの執行役へ向き直った。

「収監房だ」

 執行役はどれかなど訊かなかった。群れの審査対象を入れる、あの種類しかない。

 銀で覆われた壁の独房は、コート用の物入れほどの大きさだった。扉が閉まると空気が薄くなる。銀は体内の狼に――たとえ病んだ狼にでさえ――低く唸りかけてくる。四方の壁が近すぎて、その唸りに脈が飲み込まれる気がした。

 私は以前、一度だけここに入れられたことがある。

 七年前、襲撃のあと。容疑者がもう一人と一緒に放り込まれ、連中は私たちのことを見に来るのを忘れた。三日後に扉が開いたとき、もう一人の狼はとっくに死んでいて、銀の臭いが死臭に染み込みはじめていた。

 あの年から、私は狭い部屋にいられなくなった。

 銀塗りの壁を掻きむしり、爪の根元が裂けても止まらなかった。叫んだ。誰かが来る前に喉は枯れ果てていたけれど、それでも叫んだ。

 扉が開くと、私は床を這って外へ出た。いちばん近い「地面」にすがりたくて、ケイルの脚へ手を伸ばした。

 彼は一歩退き、私の手は空を掴んだ。

「立て、セレン」

「お願い――」

「立て。こんなことをしている時間はない」

 私は膝をついた。世界が傾く。それでも膝のまま動けなかった。

「この六年、お前がやった仕事は全部」彼は私を見下ろして言った。

「俺が承認した。銀の扱いも、後始末も、血の裁きも全部だ。嫌がると思った。だが乗り越えて、俺が誇れる狼になって戻ってくると思っていた」

 それはまるで、親切な説明でもするような口ぶりだった。

 六年分の記憶が一気にせり上がる。床板の隙間に食い込んだ銀片を素手でこすり出した日々。若いベータの連中が、裏切り者の規律を試すと言って私を押さえつけた午後。あれも承認していたのか。

「今夜は狩りと饗宴だ」ケイルは言った。

「お前は出席しろ。ヴェスパーの隣に立て。そしてこの七年、お前と彼女の間のことは誤解だったと群れに言え」

 背後で、アルドリックが視界に入った。彼は――ほとんど寛大に見えた。

「やれ、セレン。そうすれば正式なボンドの儀式を手配してやる。公に。群れ全員の立ち会いで。お前はずっとそれを望んでいた」

 私の手は首筋へと漂った。

 そこにある噛み跡はアルドリックのものだった。八年前につけられ、ここ三年で薄れてきていた。銀が私を削っているのだと、自分に言い聞かせてきた。

 私は何も言わなかった。

 憎悪を押し沈める。顔を上げる。表情には何も乗せなかった。

「……わかった。行く」


 狩りの場に着くころには、二つの篝火がすでに明るく燃えていた。鉄の焼き台には丸焼きの骸が並ぶ。群れは儀礼用の銀の手枷を身につけ、空き地を取り囲んでいた。群衆から書記が一人進み出て、顔の高さで記録石を掲げる。

「セレン・アシュビー。あなたは六年間、群れの行事に姿を見せていません。そろそろ教えてください。あなたと、あなたの家族が引き取った孤児の間にあった真実を」

 母のレナーが、折りたたんだ紙を私の手に押し込んだ。息だけで命じる。読め、と。

 私は広げた。

『私は子どものころ、はぐれてローグの領域に迷い込んだ。ヴェスパーの養父母――私の両親――が寛大にも私たち二人を家に連れ帰ってくれた。私が群れに戻ったあと、私はヴェスパーの立場に嫉妬し、嘘を広めはじめた。七年前のローグ襲撃は、その嘘の結果だった。すべて私のせいだ』

 私は紙を半分に裂いた。さらに半分に裂いた。

「どうして」記録石に届く声量で私は言った。

「自分の手でローグを国境の内側へ導いた狼を庇うために、私が嘘をつく必要がある?」

 空き地が静まり返った。

 ヴェスパーの目に涙が満ちた。彼女はゆっくりと火の明かりの中へ歩み出て、ドレスの襟を肩から引き下ろし、首を回して群れ全員に見えるようにした。

 新しいメイト・ボンドの印。アルドリックのもの。欠けも薄れもない。

「アルドリックと私は三年前にボンドを結んだの」彼女は優しく言った。

「あなたの印はどこ、セレン?」

 私の指は、勝手に首の脇の噛み跡へ伸びた。

 今では皮膚の下に薄い影があるだけだ。ほとんど消えかけている。

 ――持続性片側性ボンド解消――

 診断の一文が、目の奥で灯った。群れの医師がそこに丸を付けていた。意味がわからなかった。

 ベータの臓器は、ボンドを、ゆっくり一寸ずつ引き剥がされることに耐えられない。

 私がこの六年で死にかけていたのは、銀のせいじゃない。労役のせいでもない。

 彼のせいだった。

「名前なんてどうでもいい、セレン」アルドリックが穏やかに言っている。

「お前はこの群れでヴェスパーの居場所を奪った。俺たちはそれを正しているだけだ」

 ケイルの声が空き地に響き渡った。

「妹は何年も精神状態が不安定だった。今夜の言葉を文字どおり受け取るべきじゃない。被害妄想がある」

 小さな体が群衆をすり抜けて私の腰にぶつかり、私は土の上に倒れた。

 彼女が立ち上がりきる前にわかった。九か月間抱えていた。顔を知っている。

「ここで何してんのよ、裏切り者」リヤがシッと吐き捨てた。

 ケイルは身を屈め、携帯端末の画面を私の耳元に押し当てた。

 映像の中で、三人のローグが群れの診療所の裏手の脇道から私を森へ引きずり込んでいた。二十六歳のときだ。夜勤の帰り道。

「子どもがこれを見たら」彼は囁いた。

「本当の母親はローグの娼婦だったって思うかもしれないな」

「偽造じゃない」声がひび割れた。

「本当にあったこと――」

「演技はやめろ」彼の声が冷えた。

「あのローグは俺が雇った役者だ。本物のローグが、群れの領域内でベータに手を出すわけがない」

 立ち上がろうとした。世界がまた傾く。

 背後で誰かが私の髪をひと掴みし、引き――

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