第4章

雪乃視点

 両親の顔が途端に曇った。

「頭でもおかしくなったの、雪乃?」母は鋭く言い放った。ブランド物のスカーフを直し、これ以上ないほど嫌悪に満ちた目で私を睨みつける。

「その病的な、縁起でもない戯言でお前の妹を呪うな!」父は顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。

 凌也は奥歯を噛み締め、冷たく苛立った視線を私に向けた。

「大げさに騒ぐのはやめろ、雪乃」彼は感情のない声で命じた。「これが終わったら、欲しがっていたあのダイヤモンドのネックレスを買ってやる」

 彼はまるで、道端の乞食にでも話しかけるような口調だった。

 光り輝くおもちゃで手懐けられる、野良犬に対するように。

 私は、この世界で最も愛する三人を見つめた。

 低く、自嘲気味な笑いが漏れる。

「ネックレスは取っておいて」私は囁いた。「もう、何もいらないから」

 私は背を向け、凍てつくような暗闇の中へと歩みを進めた。

 背後で、重い鉄の扉がガシャンと閉ざされた。

 そこはクリニックなどではなかった。屠殺場だった。

 悪名高い闇医者である堂島修は、血の染み付いた錆だらけの手術台に私を縛り付けた。

 麻酔など、打たれなかった。

「鎮痛剤を使うと利益が減るんだよ」修はそう不満げに鼻を鳴らし、恐ろしいほど極太の、巨大な採取針を手に取った。

 そして、悪夢が始まった。

 手術などではない。生きたままの骨髄摘出だ。

 ゆっくりと行われる、苦痛に満ちた処刑。

 針が腰の低い位置に乱暴に突き立てられ、脊髄へと真っ直ぐにねじ込まれた。

 声帯が引き裂かれるほど、私は絶叫した。

 私の体は、末期の骨肉腫によってすでに空洞化している。

 その激痛に耐えられるはずがなかったのだ。

 骨が粉々に砕かれるような感覚。何百万匹ものヒアリが血管を食い破っていくかのようだった。

 拷問は数日間続いた。

 彼らは私から骨髄の一滴残らず吸い尽くすためだけに、私をかろうじて生かし続けた。

 目の前が真っ白になるほどの苦痛の中、家族は何をしているのだろうかと私は考えた。

 和牛のステーキでも食べているのだろうか?凌也は結衣の手を握っているのだろうか?

 ついに、私のボロボロの心臓が限界を迎えた。

 癌に蝕まれた体は、極限の苦痛に耐えきれず崩壊した。

 窒息するような最後の喘ぎとともに、痛みが唐突に消え去った。

 私はあの汚らしい、血まみれの手術台の上で一人、息絶えたのだ。

「おい!起きろ!」修は冷たくなった私の頬を叩きながら怒鳴った。

 脈を確認し、彼は凍りついた。

 闇医者の強欲な顔を、パニックが覆い尽くした。

 彼は震える手で使い捨ての携帯電話を掴み、緊急の連絡先へとダイヤルした。

 コール三回目で、凌也が電話に出た。

「九条様……問題が起きました」修は滝のように汗を流しながらどもった。

「雪乃が……死にました!」

 電話の向こう側で、沈黙が落ちた。

 次の瞬間、凌也の激怒したような冷笑が電話越しに響いた。

 ちょうどその時、彼はVIP専用のブティックで、結衣が数億円のティアラを試着するのを眺めているところだった。

「雪乃に、死んだふりなどやめろと伝えろ」凌也は毒を吐き捨てるように唸った。

「あいつの惨めな、気を引くための小細工にはうんざりなんだ!」

「ですが九条様、本当です!脈がないんです!」

「もし処置を最後まで受けないなら、今夜中にあいつの家族を破産させてやると伝えろ」

 プツッ。

 凌也は電話を切った。

 そして即座に、その医者の番号を着信拒否にした。

 修は信じられないといった様子で電話を見つめていた。

「イカれた大金持ちどもめ」彼は床に唾を吐き捨て、そう呟いた。

 殺人罪に問われることを恐れた修は、硬直し始めた私の死体を台から引きずり下ろした。

 そして、悪臭を放つ汚れたキャンバス地の防水シートで私の体を包み込んだ。

 暗く狭い廊下を引きずっていき。

 ゴミだらけの放棄された冷蔵室へと、私を放り投げた。

 腐敗臭が立ち込めており、耐え難い空間だった。

 彼は重い鋼鉄の扉に鍵をかけ、逃げ出した。

 だが、私はそこから離れなかった。

 私の魂は壊れた体から抜け出し、凍てつく空気の中を漂っていた。

 私は囚われていたのだ。腐りゆく自身の死体に縛り付けられて。

 暗闇の中で自分の肉体が腐敗し始めるのを、私は恐怖とともに見つめなければならなかった。

 私の人生は、すべてがくだらない冗談だった。

 そして死してなお、文字通りゴミのように扱われている。

 七日が過ぎた。息が詰まるような沈黙の七日間。

 やがて、重々しい足音がその静寂を破った。

 聞き覚えのある、陽気な笑い声が冷蔵室の扉の外で響いた。

 母の熱を帯びた、興奮した声が、鋼鉄の扉越しにはっきりと聞こえてきた。

「先生、実験は成功したんですか?」母は今にも歓喜に打ち震えんばかりの様子で尋ねた。

「これで、私の末娘が手術を受けても絶対に安全なんですね?」

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