第8章

美咲視点

飛行機の窓から流れ去るドイツの田園風景を眺めながら、私は奇妙な興奮と哀愁が入り混じった感情を抱いていた。二年間。この二年という歳月は、起きている時間のすべてを飲み込むほどの集中的な研究に費やされ、自分でも知らなかった限界まで私を追い込み、そして、結婚記念日に逃げ出したあの壊れた女とは似ても似つかない誰かへと、私をどういうわけか変えてしまった。

中村教授は、私たちチームに一ヶ月の休暇を与えてくれた。プロジェクトはまだ完了していなかったが、大きな節目を迎え、最後の追い込みの前に充電が必要だと教授は強く主張したのだ。『家に帰る時が来た』

「何か考え込んでいるみたいだね」隣の...

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