第6章

人は死に際になると、走馬灯を見るという。

私の一生は極めて短く、そして極めて長かった。

九条湊は私の人生に十九年間存在し、十九年目に猛スピードで私から離れ、愛理のもとへと走り去った。

あの年、何があったのだろう?

思い出すのが少し辛い。

しばらくしてようやく思い出した。西園寺愛理が階段から転げ落ちた事件だ。

当時、その場には私と彼女しかいなかった。

彼女は嘲るような目で私を見つめ、自ら後ろへ仰け反り、悲鳴を上げて転がり落ちていったのだ。

彼女は脚を押さえて苦痛に呻いた。

私は恐怖に駆られ、助け起こそうと駆け寄った。

「触らないで!」

彼女は怯えたように私を突き飛ばし、涙を溢れさせた。

「お姉ちゃん……どうして突き飛ばしたりしたの?」

「してない!」

私は大声で反論した。

「自分で落ちたんじゃない!」

けれど、誰も私を信じなかった。

監視カメラの確認を求めたが、そこは死角になっており、愛理が転がり落ちる映像しか映っていなかった。

両親がわざわざ東京から駆けつけた。

私はてっきり真相を究明しに来たのだと、あるいは実の娘である私が無事か確認しに来たのだと思った。

けれど違った。

彼らは愛理の病室へ直行し、ベッドに横たわる養女を甲斐甲斐しく世話した。

「愛理、辛かっただろう」

父は心痛な面持ちで言った。

「安心してくれ、法で裁けなくとも、私たちが全力で償うから」

私は入り口に立ち尽くし、まるで余計者のようだった。

「お父さん、お母さん……」

と声をかけた。

父が振り返り、私の頬を平手打ちした。

パァン!

乾いた音が廊下に響く。頬が火がついたように熱く、耳鳴りがした。

「どうしてこんな人間に育ってしまったんだ!」

父は私の鼻先に指を突きつけて罵った。

「なんて性根が腐っているんだ! 男一人のために、妹を害するなんて!」

私は頬を押さえ、涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。

「害してなんていない! あの子が自分で落ちたのよ! どうして信じてくれないの?」

「まだ言い訳をするか!」

母も冷ややかな目で私を見た。

「医者も言っていたわ、愛理の脚はもう二度と立てないかもしれないって。そんなにあの子が憎いの?」

私は傍らに立っていた湊を見た。

彼は俯き、私を見ようともせず、一言の助け舟も出さなかった。

母が湊に言うのが聞こえた。

「湊くん、凛のこの性格じゃ、とてもあなたには釣り合わないわ。婚約を破棄したいと言うなら、私たちは構わない」

湊は長い間沈黙し、反論しなかった。

肯定したのだ。

一生私を守ると言った男の子は、他人が私を汚した時、沈黙を選んだ。

「わかったわ」

私は涙を拭い、冷たく笑った。

「みんな私がやったと思ってるなら、それでいいわよ」

「なんだその態度は!」

父が怒りで震え出した。

「どんな態度だって言うの?」

私は怒鳴り返した。

「あなたたちは一度だって私が何を望んでいるか気にしたことなんてないじゃない! 私が元気かどうかなんて聞いたこともない! この家じゃ、愛理こそが実の娘なんでしょう!」

「そんなに私が嫌いなら、出て行ってやるわよ!」

「いいとも!」

父が叫んだ。

「出て行け! 今日からお前の口座はすべて凍結する! 野垂れ死のうが勝手にしろ! 外で恥を晒すな!」

「好きにすればいいわ!」

母も背を向けた。

「証明してやるわ、私は悪人でもないし、役立たずでもないって!」

こうして私は一文無しで家を出た。数着の古着だけを持って。

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