第7章

そういえば、それだけじゃなかった。

その事件の後、実はもう一度だけ湊に会っている。

家を出て一ヶ月目、湊の誕生日が来た。

その頃、私はすでにボランティアとして神居村に来ていた。

彼にサプライズをして、ついでに仲直りしようと思い、わざわざ休暇を取って三十キロの山道を越え、神居町までやってきたのだ。

町中を走り回り、ようやく彼が一番好きなケーキを買った。

レスキュー隊の門の前で二時間待ち続け、やっと彼が出てくるのを捕まえた。

「湊!」

私は興奮して駆け寄り、ケーキを差し出した。

「誕生日おめでとう!」

彼は少し驚いたようだったが、ケーキを受け取っても表情は変わ...

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