第5章

 アシスタントのあとに続いた言葉は、もうヴィンセントの耳には届いていなかった。

 ホテルが爆破された。彼女があの中にいる。彼女は恐らく……。

 違う。

 ありえない。

 彼女が死ぬはずがない。死んでいいはずがないんだ。

 脳裏に無数の光景がフラッシュバックし、指の間からスマートフォンが滑り落ちる。

 ヴィンセントは弾かれたように立ち上がり、ドアへと突進した。

「どこへ行くの?」

 背後からセリーナの声がした。騒ぎに目を覚まし、病室のベッドに上半身を起こしていた。

「ホテルで何かが起きた」

 ヴィンセントは振り返りもせずに答える。

「何かって? 医者は安静が必要だって言っ...

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